オタク彼是 その弍「オタクx同人女」
数年前にTwitter(とpixiv)上で『同人女の感情*1』というオリジナル漫画がめちゃくちゃ流行った。
今更説明する必要は無いかもしれないが、これは『綾城さん』という創作界隈における文字神を中心に据えて、『同人女』(ここでは主に二次の創作活動を行う女性達を指す)達が嫉妬心を抱いたり創作に熱を上げたり闇落ちしかけたりしなかったりスポ魂だったりドロドロ展開だったりを繰り広げる群像劇である。
私も同人を嗜む端くれであるので、内容に共感を覚えること屡々、読んでいて不意に未だ消化しきれない苦い思い出が込み上げてくることもあった。
この物語の最大の肝は題に『同人(趣味)』を謳っていながら実際は『対人』に焦点を当てている点だと思う。妬み、羨望、期待、落胆、疑心……そして時に他人への過ぎた崇拝心。モニターというベールに覆われているだけで、実際には私達は生身の人間とやり取りをしている。時折それを忘れそうになって、文章やイラストが上手い事がピラミッドの頂点だと思い込んでいたり、フォロワーの多い人の振る舞いが正解だと錯覚したりしそうになる。
作中、通称『おけパ*2』なる謎の人物が度々登場する。彼女(?)の存在がこれまた実に厄介で、だからこそ、この物語を一層面白く広く共感を呼ぶものにしていると感じた。意図があっての事かは分からないけれど、彼女の素性が明かされていないのは読者一人一人にとっての「おけパ」を想像しやすくするためかもしれない。ある人から見たら『文字神を自分のジャンルに引き入れてくれた神』であり、ある人から見たら『文字神を他のジャンルに引き抜いた悪』でもある。またある人は『大手とすぐに繋がれるコミュ力高い憧れの存在』と感じ、ある人は『自分じゃ手の届かない大手と仲良くしてる妬ましい存在』と感じるだろう。
たまに創作活動に行き詰まった時はこの作品を読み返す。そうすると不思議と、創作への熱が高まって自分にも何か大作が書けそうな気がする(※気がするだけ)のである。