未完で甘露な日常

蜜柑は柑橘 日々を満喫

ポケットの中には、いつだって戦争と夢がある

ガンダムシリーズの中でも評価が高い(らしい)ポケットの中の戦争、通称「ポケ戦」を初めて観た。1989年発売のOVA作品であり、全6話構成。1話1話区切られてはいるが、実質一本の映画を観ているかのようだった。

主人公であるアルはガンダムに乗るでもなく戦う訳でもなく、終始一般人(非戦闘員)として描かれている。それ故か他の子ども達と同様に、どこか戦争というものに対して憧れを抱いてるのが印象的だった。どうにもならない争いへの無情感と、爽やかさで冒険心をくすぐるようなワクワク感が同居する、何とも不思議な作品である。日常と非日常の対比、大人と子どもの対比、守る者と守られている者との対比、知ってしまった者とまだ知らない者の対比。アルのクラスメイトに代表されるように、子どもの無垢な感性は純粋だけど同時に残酷で、彼らもいつか世の中の恐ろしさや無意味さを知っていくのだろうと思う。それが本当の意味での大人になる、という事なのだろうか。

一番心に残ったのは、最終話で「もう戦わなくていいんだ!」とバーニィ達へ駆け寄るアルのシーンだ。彼の叫び空しく目の前でバーニィは戦死してしまうのだけれど。初見時は随分と酷(むご)いラストだなと感じたが、バーニィ目線で改めて見ると「大切なものを守るため」、「最後までアルのヒーローとして」死ぬことができたのは彼にとって幸せなことなのではないかとさえ思う。

題名の『ポケットの中の戦争』の通り、所詮一少年達のポケットの中のような小さな出来事ではあるが、そのさらに奥には子どもならではの純粋な期待や希望、未来への願いが詰まっている。評価通りとても良い作品だった。