未完で甘露な日常

蜜柑は柑橘 日々を満喫

ぴたテン〜天使といつもいっしょに〜

中学受験を控えた小学6年生・樋口湖太郎はある日、隣に引っ越してきた少女・美紗と出会う。ちょっと変わっているが何かと湖太郎の世話を焼こうとする美紗と、突然現れた謎めいた少女・紫亜という2人の年上の少女によって湖太郎の日常は徐々に変わっていく。

【マンガぺディア(https://mangapedia.com/ぴたテン-1eugl5bby)より引用】

 

ぴたテン』という漫画をご存知だろうか。月刊電撃コミックガオ!で2000年頃に連載されていた作品である。巻数は全8巻。アニメ化もされたため知名度はそこそこあると思うのだが、アニメは観たが原作は読んだことが無いというコメントをしばしば見かける。調べた限りだと、アニメは原作の後半には触れずに終わったようで、この作品の持つ独特なダークさや仄かな色気のようなものが好きな私には少し勿体無いと感じてしまうのである。アニメを観ていない側の私が言うのも何だが、少しでも興味を持たれたのであれば原作も読んでほしいなと思いこの記事を書いている。令和のデ・ジ・キャラットが始まるのであれば、ぴたテンも原作準拠でリメイクしてくれないかなぁと切に願う。

序盤はよくある(?)押しかけヒロイン的なドタバタコメディなのだが、中盤でその雰囲気は一変する。主人公の前世での因果が判明し、大切な人との永遠の別れを経て、最後は彼らにとって辛く大きな決断に迫られる。読み返すと1話から細かい伏線が張られていて、(初見時は)明るい話なのに微かな不穏さが感じられるのは何故だろうと思ったのが腑に落ちた。

ストーリーが進むにつれて、天使であるヒロインの美紗との関係性(≒主人公が彼女に向ける感情)も変化していく。最初は迷惑でただ煩い謎の少女だったのが、やがて好ましく、気になってしょうがなく、かけがえのない人になり――それが行き過ぎて、徐々に美紗もとい『天使という存在』へ依存していくようになる。天使の役目は湖太郎を幸せにすること。湖太郎の望みは美紗とこれからもずっと一緒にいること。けれど天使と人間は本来共に生きる事はできない。そして湖太郎を幸せにできなければ美紗は天使失格となり、存在ごと抹消されてしまうのだ。彼女と一緒にいたい、でも一緒にはいられない。自分が幸せになれなければ、美紗は消えてしまう......。湖太郎の、自分の本当の幸せとは何なのか。悩んだ末に少年が出した答えは、是非漫画のラストを読んで確かめてみてほしい。

この作品には主人公の友人として二人の少年少女が出てくるのだが、彼らも含め皆悩みに対して自分なりの答えを出して、前に歩き出そうとしていく。昨今は電子書籍の普及で私も色々な漫画をタブレット等で読むのだが、この作品だけは紙の本で読みたいのでずっと手元に残している。『天使』が常に人のそばにいて見守っているように、苦しい時にページをめくるといつも勇気をもらえる気がするのだ。